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日経サステナブルリンクでESG関連リスクの可視化を

真和総合法律事務所 弁護士 高橋大祐氏(日経サステナブルリンク・アドバイザリーボード)

環境・人権問題、経済制裁や腐敗防止にも関わる時代 

――どのようなESGに関する相談が企業から寄せられていますか。 

人権デューデリジェンス(DD)やサプライチェーン調査に関してのレビューを依頼されることが多いです。実際に調査などをしてみて、足りない点はないかを確認し、改善につなげようとする企業が増えています。人権DDからさらに先に進んで救済窓口の設置に関する相談などもあります環境関連も増えています。例えば気候変動対策再生可能エネルギーなどでウォッシングと取られない開示・表示方法に対応するケースがあります 

「私はグローバルコンプライアンスが専門で、経済安全保障・腐敗防止・情報セキュリティなどの相談も多く扱ってきました。これらの分野はもともとサステナビリティとは関係が深いと見られていなかったかもしれませんが最近では人権などの問題と関連して相談を受けることも増えています。『人権といえば労働問題や差別・ハラスメントのような固定概念にとらわれず、幅広い視野でサステナビリティに関するリスクをチェックする必要が出てきています 

リスクの早期発見が企業価値向上につながる 

――具体的にどのような対策が不可欠ですか。 

サプライチェーンに潜むあらゆるリスクを可視化することが重要です。もちろん全てのリスクを見つけることはできないでしょう。自然環境の変化や技術の進歩のスピードは予想以上に早く、新たなリスクが生まれ続けているからです。それでも企業は備えなければなりません。人権や環境に関するリスクが高い地域や事業から重点的に調査し、ステークホルダーと対話しながら対処法を整備しなくてはなりません。備えがないまま、事業に深刻な影響が出てから相談に来られる企業が多い。リスクの芽を早期に摘む作業を積み重ねている企業ほど、サステナビリティを企業価値の向上につなげていると感じます 

日経サステナブルリンクを対話の出発点に 

――日経サステナブルリンクにどのような期待をされていますか。  

高橋様サプライチェーン調査に取り組む企業が増えていますが、形式的な調査に終わっているケースが多いと感じています。調査されるサプライヤーも多くの調査票が送られてきていて対応しきれないのが実情でしょう。調査する側も聞き方に配慮する必要があります。サステナビリティは発注先と供給先が責任を分担し、協力して改善する意識が重要です。サステナビリティは監査のようなトップダウン式の調査に限界があります。データを蓄積・共有し、改善していくための対話につなげることが重要で日経サステナブルリンクは双方向の対話の出発点』であるべきだと考えています 

――調査する側、調査される側の相互理解も重要ですね。  

例えばサプライヤー側も事業環境に合わせて優先順位を付けて対応を進めていると思うのですが、調査で『対応できていない』と回答したら、『優先順位が低い対策でも早急に進めるよう要求をされるのではないか』『対策が遅れている企業と評価されるのではないか』と不安になると思います。そうではなく、調査する企業は評価が目的ではなく、『一緒にサステナビリティの取り組みを進めるのが目的の調査』と明確に伝える必要があるでしょう。企業のサステナビリティの取り組みには、地域や企業規模などでギャップが生じているのが実情です。それぞれの企業の状況を把握し、仮に対策が不十分な分野があれば協力して改善していくことでギャップを埋めていく。調査によって蓄積された情報を、次の対策につなげることが重要です 

――企業のサステナビリティ担当の皆様にメッセージを。  

これまで企業は外部からの声をネガティブにとらえ、『苦情処理』として扱ってきた歴史があります。しかし企業のサステナビリティの取り組みが重視されるようになった今、ステークホルダーの声は、自社のリスクを把握するための重要な情報だと捉える必要が出てきています。社会は自社をどのように見ているのかどんな期待をしてもらえているのか、を知ることは経営する上で大切です。ただ、外部からの指摘に向き合い説明責任を果たすことは、非常に根気の要る難しい作業です。事実に反するクレームなどには毅然と対応しつつも、対話を基本にしなければならない。個社の対応も大切ですが、例えば日経サステナブルリンクの参加企業の横のつながりを深め、対話の成功事例などを共有する場を作ることも一案だと感じています 

真和総合法律事務所 弁護士 高橋大祐氏 

法学修士(米・仏・独・伊)・日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。グローバルコンプライアンス、サステナビリティ/ESG、テクノロジー分野を専門として、法的助言・危機管理・紛争解決を担当。 サステナビリティ/ESG分野における様々な活動に従事。国際法曹協会(IBA)ビジネスと人権委員会共同議長、日本弁護士連合会弁護士業務改革委員会CSRと内部統制PT副座長、第一東京弁護士会環境保全対策委員会元委員長、海外贈賄防止委員会(ABCJ)運営委員。また、OECD責任ある企業行動センター・コンサルタント、国連ビジネスと人権政府間作業部会代理リーガルエキスパート、外務省ビジネスと人権行動計画推進作業部会構成員、環境省環境デュー・ディリジェンス普及に関する冊子等検討会委員、ジェトロSDGs研究会委員、2025年日本国際博覧会持続可能な調達ワーキンググループ委員などの公職も歴任。 各種企業の社外役員、サステナビリティ委員会委員、サステナビリティ・アドバイザリーボード・メンバー等も務める。

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