戸田建設はサステナビリティ経営を推進するにあたり、2019年から毎年、ステークホルダーダイアログを開催しています。2025年1月20日(月)に行われたダイアログでは、サプライチェーン全体での人権課題解決や建設業の担い手などについて、同社の大谷清介社長、戸田守道副社長らが、サプライヤーの代表である遠藤和彦向井建設会長(戸田建設全国利友会会長)に取り組みを聞きました。
(聞き手は戸田建設)
―――ここまでの道のりや現状の課題などについて教えてください。
「2013年からベトナム、23年からはミャンマーの技能実習生を受け入れています。実習生には法律で320時間の訓練が定められていますが、当社は640時間を使って訓練を実施しています。日本語教育や日本の生活習慣の説明、技能訓練をしています。日本の生活習慣に関しては、日本人が時間の正確さを大切にすることなどを覚えてもらっています。訓練以外のサポートとしては、海外実習生には生活習慣の違いなどを考慮し、専用の寮に入ってもらっています。日本人も寮長として住み込み、寮の使い方は寮内の委員会で決めています。周辺道路の草むしりなどを通じ、近隣住民とも交流しています」
―――どのような人材が日本に来ているのでしょうか。
「ミャンマーからは自分の人生を変えるんだという意志を持つ、選ばれた人材が来ていると思います。日本語の習得も早く、社内の多国籍グループの中で、すでに職場のサブリーダー的存在が出ています」
―――外国人の人権配慮に関しては、人種の違いの理解・尊重が重要なファクターですね。これからもっと外国人労働者が増えたとき、我々にとってチャレンジになります。若い人たちと一所懸命に取り組みたいと考えています。
―――外国人労働者について業界的な課題はありますか。
「2年後に技能実習制度が育成就労に変わると、おそらく2年間、日本で受け入れた企業で働けば、業界内で地域間、企業間を自由に移動できるようになります。そうすると、年収の高い大都市圏の企業への人材の流入が起きるでしょう。初めに外国人実習生を受け入れた企業は、研修費や生活費など初期費用の負担や回収に不安感を持っています。移籍ルールなど制度がどうなるのか、注視していきたいと思っています」
―――建設業の担い手不足をどう考えていますか。
「このままでは日本人技能者は10年間で40万人ぐらい減るので、30年後には半減してしまいます。当社のような専門工事会社が頑張っても、業界全体では担い手を賄えないのは間違いありません。ゼネコンさんが施工方法などを変えていく必要があるかもしれません」
―――当社もファブリケーションの研究はかなり以前から進めていて、近いうちに自社物件で実際に建ててみて、問題点を洗い出そうと思っています。本当に担い手がいなくなった時、当社だけ遅れを取るわけにはいかないからです。ただ、最終的には素材や法律が関係してくるので、産業全体、あるいは国全体で取り組む問題だと思っています。そういう変化を社会が受け入れてくれることも必要です。
―――多くの人々に働いてもらえるために、建設業界が魅力的に見えることが、避けて通れないと思います。
「当社は建設業が面白さを失わないよう一つ一つ違うものを作る「一品生産」の能力の維持に力を入れています。最近は多くの関係者に理解してもらえるようになってきました」
―――今回の対話の成果を、まず建設業における労働力不足や労働者の処遇・就労環境の改善といった人権リスクへの対応、そして人権課題の特定や重要課題(マテリアリティ)の見直しを進め、今後の活動計画を検討するために活用するよう、サプライチェーンと一体となり、魅力ある建設業を目指していきます。ありがとうございました。